津波シェルターとは
津波シェルターは、津波の到達までに高台や津波避難ビル・避難タワーへ逃げ切れない人が、その場で身を守るための密閉型の避難設備です。津波避難の原則は「より高く、より遠くへ」ですが、次のような場合には避難そのものが間に合いません。
- 海岸や河口に近く、津波の到達までの時間が短い地域
- 高齢者、要介護者、乳幼児など、移動に時間がかかる人がいる家庭・施設
- 避難誘導や救助にあたり、最後まで現場に残る消防・警察・自治体の職員
- 夜間や悪天候で避難経路が使えない場合
シェルターは、避難タワーや高台の代わりではなく、逃げ遅れた人の「最後の砦」として、避難計画を補うものです。
浮上型と固定型の違い
津波シェルターは、津波が来たときの挙動で大きく2つに分かれます。
| 浮上型 | 固定型 | |
|---|---|---|
| しくみ | 球体・カプセル状の本体が津波に浮いて流れる | 本体を基礎に固定し、水没しても中に水を入れない |
| 主な素材 | FRP、樹脂、発泡素材など | 鉄筋コンクリートなど |
| 設置 | 軽量で、据え置きやすい | 基礎工事と据付が必要。建築確認申請の対象 |
| 津波時 | 流されるため、漂流物との衝突や、流された先での救助待ちが課題 | その場に留まるため位置が分かる。漂流物の衝撃に耐える構造が必要 |
| 火災 | 素材によっては津波火災への備えが必要 | 鉄筋コンクリート造は火災に強い |
| 平常時 | 収納・保管スペースが必要 | 防災倉庫などとして使える |
東日本大震災では、津波に流された家屋やがれきから火災が広がる「津波火災」も発生しました。水だけでなく、漂流物の衝撃と火災まで想定するかどうかが、方式を選ぶ分かれ目になります。
固定型コンクリートシェルターのしくみ
当社の避難シェルター「レスキューブ」は、東日本大震災の経験から生まれた潜水固定型のシェルターです。浮上型の「流される」不安を解消するため、本体を地上に固定する発想で設計しました(特許第5637414号)。
本体:工場製のPCコンクリートボックス
本体は、建物の消防用防火水槽として実績のある工場製PCコンクリートボックスです。中の水が漏れないということは、外からの水も入りにくいということ。これを地上に固定し、水密扉を取り付けてシェルターにします。鉄筋コンクリート造のため、漂流物の衝撃や火災に強く、ボックスを連結して規模を拡張できます。
浮かせない:基礎との緊結
水没すると本体には大きな浮力がかかります。レスキューブは、本体と基礎・杭を緊結する「ホールディング基礎工法」で浮力と外力に抵抗し、国土交通省の津波に関するガイドラインに沿った構造計算で、津波高10mに耐えうる設計としています。
水を入れない:扉・換気・貫通部
- 水密扉:ひとつのハンドル操作で複数箇所をロックする建具。津波用には6点連動式も装着可能。手動で開閉でき、停電時も使えます
- 自閉式換気扇:水位の上昇に合わせて気道を自動で閉じ、水位が下がると自動で復旧する専用の換気装置
- マルチコネクタースリーブ:換気・電気の配線や配管を、止水性能を保ったまま本体に接続
待機できる:72時間を想定した装備
救助が来るまでの待機を想定し、酸素供給・CO₂除去、LED照明、非常用電源、ポータブルトイレ、非常食・飲料水、外断熱などを用途に応じて装備します。

選ぶときに確認する6項目
- 想定する津波:自治体の津波浸水想定で、敷地の浸水深と到達時間を確認する
- 収容する人数:家族、従業員、施設の利用者とスタッフ
- 待機時間:水が引くまで・救助が来るまでの時間と、必要な空気・水・電源
- 漂流物と火災:周辺に車両、船舶、コンテナ、燃料タンクがあるか
- 敷地条件:大型車両が寄り付けるか、架空線などの支障物、地盤
- 平常時の使い方:倉庫、備蓄庫、ガレージなど、日常的に使えるか
収容人数の目安は、レスキューブの場合、次のとおりです。
| 主室ユニット | 延床面積 | 定員 | 最大 |
|---|---|---|---|
| 3本 | 約38㎡ | 20人 | 30人 |
| 4本 | 約46㎡ | 26人 | 38人 |
| 5本 | 約54㎡ | 32人 | 48人 |
| 6本 | 約62㎡ | 40人 | 60人 |
※ 主室ユニット+前室ユニット(定員4人)+端部・ドアユニットで構成した場合の目安です。
設置までの流れと工期
- ご相談・ヒアリング:目的、設置場所、規模、想定する災害
- 現地調査:重機・トレーラーの寄り付き、支障物、地盤を確認
- 基本設計・お見積り
- 建築確認申請・構造計算:固定型シェルターは建築物として手続きします
- 工場製作:PC工場でユニットを製作。最短3週間
- 基礎工事・据付:クレーン1台とバックホー1台で据付。据付自体は約3日
- 完成検査・引渡し
- 保守:水密扉・換気・電源の定期点検と備蓄品の更新
特殊な工法に頼らず一般的な建築技術で施工できるため、地元の設計事務所・建設会社と連携して設置できます。
費用を左右する要素
費用は個別見積りですが、金額を左右する要素は次の3つです。
- ユニット数(規模):収容人数で決まります
- 基礎の形式:地盤によっては杭基礎が必要になります
- オプション設備:酸素・CO₂除去、太陽光パネル、通信機器、内外装
自治体の津波避難施設の整備補助や、企業のBCP関連の補助が使える場合があります。制度は自治体・年度によって異なるため、設置予定地の制度を確認します。
- 本記事の固定型シェルターに関する仕様は、合同会社レスキューブの避難シェルター「レスキューブ」(特許第5637414号、実用新案第3193067号、商標登録「レスキューブ」)にもとづきます。
- 津波避難の基本は、高台や津波避難ビル・避難タワーへの早期避難です。シェルターは避難計画を補う設備として検討してください。