止水板の助成制度は「市区町村ごと」にある
止水板(防水板)の設置に対する補助金・助成金は、国の一律の制度ではなく、市区町村が個別に設けている制度です。そのため、制度の名称、対象者、助成率、上限額、担当部署が自治体ごとに違います。
共通しているのは、次の3点です。
- 対象は、区市町村内の建物の所有者・使用者(住民、法人、管理組合など)
- 対象経費は、止水板の設置工事費(関連工事を含む)。簡易型止水板の購入費を対象にする自治体もある
- ほとんどの制度が、工事の着手前に申請し、交付決定を受けることを条件にしている
東京23区の実例
各区の公式サイトで確認できる内容をまとめました(2026年9月時点。年度や予算により変わるため、申請前に必ず各区の最新情報をご確認ください)。
| 区 | 対象者 | 設置工事の助成 | 簡易型止水板の購入 | 申請の条件 |
|---|---|---|---|---|
| 港区 | 建築物の所有者・賃借者、マンション管理組合 | 工事費の4/5、上限150万円 | 対象に含む | 交付承認前の着工は対象外。計画段階で相談 |
| 大田区 | 個人/個人以外 | 個人:4/5、上限100万円(区内に住民登録のない個人は50万円) 個人以外:3/5、上限150万円 | 個人:4/5、上限25万円 個人以外:3/5、上限20万円 | 交付決定前に工事をした場合は対象外 |
| 品川区 | 個人/法人 | 個人:4/5、上限100万円(区外に住民登録の個人は50万円) 法人:3/5、上限150万円(区内登記1年未満は75万円) | 脱着式・簡易止水板が対象 | 申請年度内に工事を完了し、完了検査を受ける |
| 中野区 | 区内に住む方、区内に店舗・事務所を持つ法人、区内マンションの管理組合 | 工事費の1/2、上限100万円 | 購入費の1/2、上限15万円 | 工事は着手前、購入は購入前に申請。消費税・送料は対象外 |
| 板橋区 | (窓口で確認) | 工事費の1/2以内、1建築物につき上限50万円 | — | 設置を検討する段階で窓口へ相談 |
助成率は1/2〜4/5、上限額は50万〜150万円と幅があります。2025年9月の記録的な大雨を受けて大田区が同年12月に制度を新設するなど、制度の新設・拡充が続いている分野です。数年前に「制度がない」と確認した自治体でも、あらためて調べる価値があります。
東京23区以外でも、政令指定都市をはじめ多くの自治体が同様の制度を設けています。
マンション管理組合・法人が申請するときの注意点
1. 管理組合が対象者に含まれるか
港区と中野区は対象者に「マンション管理組合」を明記しています。一方、「個人」と「法人(個人以外)」の区分しか書かれていない自治体では、法人格のない管理組合がどちらに当たるのか、申請者を誰にするのかを窓口で確認する必要があります。
2. 総会決議のタイミング
共用部分の工事は総会の決議が必要です。「総会で工事を決議 → 助成の申請 → 交付決定 → 契約・着工」の順になるよう、総会の時期と自治体の受付期間を合わせて計画します。交付決定の前に契約・着工すると、助成の対象外になります。
3. 年度内完了の条件
品川区のように、申請した年度内に工事を完了し完了検査を受けることを条件にする自治体があります。止水板は受注生産で納期がかかるため、年度の後半に申請すると間に合わないことがあります。
4. 上限は「1建築物あたり」のことが多い
車路・階段・エレベーターなど複数の開口部に設置すると、工事費は上限額を超えることが珍しくありません。助成はあくまで費用の一部と考え、長期修繕計画の中で資金を手当てします。
5. 性能の条件
一定の止水性能を満たす製品に限る自治体があります。製品の仕様書や性能を示す資料の提出が求められるため、見積りの段階で施工業者に確認します。
試算例:工事費750万円の場合
当社が関わった東京都大田区の既存マンションでは、地下駐車場スロープ・階段・エレベーター・地下扉に防水板・防水扉3種6台を設置し、建築工事費は設計費・経費を除き約750万円でした(2022年施工、日刊工業新聞 2022年10月27日付)。
同じ規模の工事を現在の制度に当てはめると、助成率を掛けた額が上限を超えるため、助成額は上限額になります。
| 制度の例 | 助成率×工事費 | 助成額(上限適用後) | 実質負担 |
|---|---|---|---|
| 3/5・上限150万円 | 450万円 | 150万円 | 約600万円 |
| 1/2・上限100万円 | 375万円 | 100万円 | 約650万円 |
| 1/2・上限50万円 | 375万円 | 50万円 | 約700万円 |
※ 試算は考え方を示すためのものです。対象経費の範囲や申請者の区分により実際の助成額は変わります。
自分の自治体の制度を探す方法
- 検索する:「自治体名 止水板 助成」「自治体名 防水板 補助金」
- 自治体サイトで探す:防災、下水道、道路・河川、建築・住まいのページ。担当部署は土木課、道路管理課、河川下水道課、建築調整課など自治体によって違う
- 窓口に電話する:対象者、助成率・上限、受付期間、予算の残り、必要書類を確認する
- 見積りを取る:製品の仕様書・図面・見積書を揃える
- 着工前に申請する:交付決定を受けてから契約・着工する
申請から受け取りまでの一般的な流れ
- 窓口へ事前相談(計画段階)
- 交付申請(見積書、図面、建物の所有を示す書類、管理組合の場合は総会議事録など)
- 交付決定の通知
- 契約・着工・完了
- 完了報告(領収書、施工写真)と現地確認
- 助成金の請求・受け取り
助成金は工事完了後の後払いが基本です。いったん全額を支払う資金が必要になる点に注意してください。
- 出典:港区「止水板設置工事等の助成」 公式ページ
- 出典:大田区「止水板設置助成制度」 公式ページ
- 出典:品川区「止水板設置等助成(防水板設置工事助成)」 公式ページ
- 出典:中野区「止水板の工事・購入費用の一部を助成します」 公式ページ
- 出典:板橋区「止水板設置工事助成制度」 公式ページ
- 制度の内容は2026年9月時点の各区公式サイトの記載にもとづきます。年度・予算により変更されるため、申請前に必ず最新の情報をご確認ください。